『忘れられない、あの一言』「いい人に会う」編集部編、2009年
二つ目の紹介はフリーキャスターの草野満代さんの言葉です。
「できない、じゃなくて、やるんだよ」草野満代
草野さんは平成元年にNHKに入社しました。NHKの新人アナウンサーにとって最初の試練は夏の高校野球中継だそうです。草野さんが配属になった金沢放送局は数人しかアナウンサーがいないため、新人であっても戦力になる必要がありました。
しかしあいにく草野さんは野球のルールを知らなかったため、決勝までには観客席のリポートができるようにはなるようにと上司から懇願に近い言葉を言われました。
ところがある日、その上司から突然明日実況するようにと言われてしまいます。予定になかった放送枠を急遽設けたためでした。
草野さんは涙ながらに抗議します。つい最近ルールを覚えた自分に「公の」放送なんてできるわけがない、と。しかし受け入れられず、上司はめそめそする草野さんを残して別の仕事に行ってしまいます。
草野さんが泣いていると、やり取りを聞いていた先輩が突然こう怒鳴りつけたそうです。
「いつまで泣いてるんだ!できない、じゃない、やるんだよ」
草野さんはこの言葉で学生気分の残っていた自分を反省し、実況のための資料作りに取り掛かったのです。夜遅くまで作業をしているとその先輩が一枚の紙を差し出しました。
そのタイトルは「解説者と話すこと」。先輩はルールを覚えたての草野さんのために解説者とどのような話をすればいいかいくつも書き出してくれたのです。
その紙は黄色に変色した今でも大切な宝物となっています。
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