伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』

伊勢田哲治『動物からの倫理学入門』

タイトルを見ると「動物愛護？胡散臭い！」と思うかもしれないが内容は極めて正当な倫理学入門書。初心者向けの倫理学入門書としては加藤尚武の『現代倫理学入門』が有名だが、それよりさらに踏み込んだ内容になっている。加藤先生の本はページ数の制約からかやや言葉足らでわかりにくいところがあったが、伊勢田先生の方はかなり詳しい説明がなされているため内容そのものは高度になっているのにむしろ理解が容易。とにかく読み手に理解させようという工夫が随所に見られ、まさに初心者向けという印象。

扱っている内容はメタ倫理学、規範倫理学、応用倫理学と幅広く、とりあえずこの本一冊読めば英米系倫理学の外観はほぼ把握できる。後書きで認めているとおりメタ倫理学では非認知主義が、規範倫理学では功利主義が優遇されているのはご愛嬌。