2013/05/11

エラリークイーン『Zの悲劇』

エラリークイーン『Zの悲劇』


『Xの悲劇』、『Yの悲劇』に続くシリーズ三作目。
それまでの二作と違い、視点がサム警視の娘ペイシェンスの一人称に。
『Yの悲劇』のラストから10年後という設定で、登場人部の地位や雰囲気が大分変わっている。主人公ドルリー・レーンは老いてしまったし、サム警視は退任して私立探偵、ブルーノは州知事に転身している。

レーンがここまで老いさらばえたのはYでのラストシーンが影響している。確かにレーンは真実を見抜き事件を終わらせたが、おそらく自身は敗北に打ちひしがれたのだろう。
そのせいかX、Yのように華麗な推理を積み重ねていくレーンの姿は終盤まで見られず、逆に致命的なミスをも犯してしまう。
解説にある通り、ZはYのラスト以降一度は表舞台から降りたレーンの復活劇だといえ、その手引きをするのがサムでありペイシェンスであり、そしてブルーノなのである。


面目躍如というかたちで最後に行うレーンの推理は見事だが、細かいことを言えば論理的に完全に正しいとは言い切れない。「夜勤の常勤者」がなんの訳語か底本を見ない限りわからないが、少なくともこの日本語からはレーンの推理は導かれない。

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