2013/05/11

ハロルド・ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う』

ハロルド・ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う』


人が動物を飼う、食べる、実験に使うといった行為について考える本。文体がかなり柔らかいので読みやすい。ただし訳には疑問のあるところもあり、たとえば「道徳的直観」が「道徳的直感」と書かれているのは明らかに誤りだろう。

一度ベジタリアンなった人の多くが肉食に回帰することが多いという事実の紹介や、イルカセラピーの詳細などが非常に興味深い。9章でシンガーやレーガンの議論も出てくるが、どちらかというとこの本の重点はこうした人と動物の関係についての事例報告にある。ベジタリアンであるか否かに関わらず、動物に対して一貫した態度を採ることは非常に困難である。ペットの犬を可愛がりながら夕食ではステーキを食べ、ハンティングは残虐だと非難する一方で水族館でイルカショーを楽しむ。動物を殺すのは嫌だけどハンバーガーはおいしい。こうした矛盾をどう理解するべきなのか考えさせられる。

末尾には訳者の解説がついているが、解説というよりはあとがきであり、訳者の主張が書かれている。動物解放論に対して非難に近い書き方をしており、はっきり言ってこの本の解説としては失格である。解説というからには内容を踏まえているべきだが、ほとんど無関係の文章になってしまっている。

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