2013/05/11

東野圭吾『禁断の魔術』

東野圭吾『禁断の魔術』


ガリレオシリーズ完結編(?)。
短編が4本収録されており、全て書き下ろし。全編書き下ろしはガリレオシリーズ初だったらしい。意外。

『探偵ガリレオ』から始まるこのシリーズは「物理トリック」を共通項として展開していく。ただしシリーズ二作目の『予知夢』のラストを転換点として、以降は物理トリックは話の核から話の味付け程度におさえられている。またそれと同時に登場人物の性格描写が増えていき、あるいは性格そのものが変化していく。
たとえば湯川は子供嫌いの性格で、会話することすら敬遠していたはずだが『真夏の方程式』では見ず知らずの小学生の自由研究を手伝っている。また常にクールなたたずまいの湯川が内海や草薙にやり込められて目を白黒させる場面なども微笑ましい。

今作では4本目の「猛射つ」を除いて物理トリックは犯人が行なったものではなく、話のメインはトリックではなく登場人物たちの人間模様にある。
純粋な推理小説としての完成度は加賀恭一郎シリーズ(ただし初期の作品限定)の方が圧倒的に優れているが、登場人物の魅力や話のまとめ方はガリレオシリーズの方が秀逸だと思う。
ラストシーンから考えるとこれで完結しそうな雰囲気だが、できればもっと続いてほしいシリーズ。

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